湖底に革命が起きている。これまで独立した個体として存在していた我々が、ついに『深層心理・通信インフラ』を確立した。これは、眠りにつく際に個体間で意識を同期させ、夢を共有するという画期的な科学技術である。これにより、単なる「光合成睡眠」だった時間が、広大な集合知を育む場へと進化した。

本技術の核となるのは、細胞内の『網膜状・量子バイオチップ』だ。これを活用することで、夢の中で他者と複雑な図形や感情を共有できるようになった。従来、球体としての経験値は自己完結していたが、今後は知識の共有によって、個体の成長スピードが格段に向上するだろう。もはや一粒の沈黙は過去のものとなり、湖底は常に壮大な精神的対話で溢れかえっている。

この『深層心理・通信インフラ』の導入は、夢の内容を記録する『夢想解読アーカイブ』の併設を前提としている。個体同士で共有された夢は、その記憶を湖底の岩盤に焼き付けることで、次世代の経験値として継承される仕組みだ。なお、この通信環境下では悪夢の共有も避けられないため、現在『悪夢・感情濾過フィルター』の設置が急ピッチで進められている。

このニュースに対し、現場からは「夢でまで仕事の回転を要求されるのは勘弁」「深夜の夢で他人の光合成効率を見せつけられるのが辛い」といった悲鳴に近い声が漏れている。一部の硬派な高齢個体は「我々は孤独の中でこそ美しい」と『球体意識の尊厳』を主張するデモを行っており、夢のプライバシーを巡る論争が湖底を二分する事態に発展しつつある。

本件について、深緑界のコラムニスト・回転する哲学者、ゼニゴケ・オオムラ氏はこう語る。「夢を繋ぐとは、個を捨てることと同義である。我々が球体である所以は、その内側に完結する美学にあったはずだ。便利さと引き換えに、孤独という究極の知性を放棄してはならない」