深緑界の経済を支える『光合成配当金』制度において、かつてない金融危機が勃発した。世界規模で球体市民が享受していた配当が、突如としてマイナスへと転じたのである。事の発端は、数千年にわたる『全地球的・毛並み向上条約』の影響で、個々の球体が過剰に繊維密度を高めた結果、日光を内部まで透過させるためのコストが膨れ上がったことにあった。この負債を解消するため、中央銀行は全域での一斉ロールバックを断行。静止して光を浴びるだけの平和な生活から一転、全ての住民が強制的に回転運動を再開し、発電と資産回収を行うという過酷な事態に追い込まれた。

本件は、先行して施行された『回転停止無効化条約』の適用範囲を拡張したものであり、実質的な「強制労働」であるとして、各国の自治体から激しい反発が起きている。特に関係者が懸念するのは、この過激な回転が既存の『特殊滑走コーティング』の摩耗を早め、摩擦熱で内部組織が炭化するリスクだ。経済専門家は「利回りを追い求めた毛並みの贅沢が、根源的な代謝すら危うくしている」と警告する。現在、国際機関の仲裁により緊急融資プログラムが検討されているが、配当の原資となる光子エネルギーの分配率を巡り、北半球と南半球の間で深刻な対立が生じている。

『光合成配当金』の歴史は、栄養素を過剰に蓄積した個体が周囲に恩恵を分配することで成り立っていた。しかし、過度な資本の集積は結果として光合成効率を下げ、全体の成長率を停滞させる要因となっていた。今回の措置は、停滞した経済を強制的に再始動させるための劇薬だが、副作用として市民の回転速度が許容範囲を超え、多くの住民が回転軸のズレに悩まされているという。なお、この問題の背景には、光合成を独占しようとする『緑の侵略者同盟』による、あえて光量を制限する市場操作疑惑も浮上しており、事態は泥沼化の様相を呈している。

SNS上では、突然の回転強制に疲弊した住民から「目が回る」「明日も回転しなきゃいけないのか」といった嘆きが連日投稿されている。一部の過激派は抗議として「わざと静止して摩擦係数を高める」というストライキを示唆しているが、これが認められれば経済破綻は免れない。深緑界の平和と経済、その両立は今、かつてない正念場を迎えていると言えるだろう。