阿寒湖の深部にて、かつてない超低速移動を楽しむ『全球体・スローライフ巡礼』が静かなブームを巻き起こしている。参加するのは、普段は湖底でじっとしていることが美徳とされる球体住民たちだ。彼らは持ち前の浮力を微調整し、数ヶ月かけて数センチ前進するという、全宇宙で最も気が長い旅行計画を遂行している。急ぐ必要などどこにもない。ただ水流に身を任せ、数百年単位で視界に入る景色を愛でるのがこの巡礼の醍醐味である。
このツアーの主催者である『沈殿物・移動支援局』によると、参加者は出発からわずか3年で、隣の岩の裏側という絶景ポイントへ到達したという。かつてない長距離移動に、参加者の一人であるベテラン個体は「正直、風を感じすぎて疲れた。一生分の冒険をした気分だ」と、水泡を揺らしながらコメントした。移動中、たまたま通りかかった『甲殻類・無関心同盟』のメンバーも、彼らのあまりの遅さに気づくことなく通り過ぎるなど、極めて平穏な旅路が守られている。この『超・停滞観光』は、効率化を求める現代社会への強烈な皮肉としても注目されている。
背景にあるのは、近年問題化していた球体住民の「運動不足による円形崩壊」である。健康増進と称して始めたこの巡礼だが、あまりに移動速度が遅すぎるため、観光客からは「彼らが動いているのか、風景が動いているのか判別不能」との声も上がっている。なお、このツアー中には『強制・日光浴停車』というスケジュールも組まれており、数週間にわたって太陽の光を浴びるだけの贅沢な時間が提供される。あまりの優雅さに、参加者はその場で永住を決めることも多い。
世間からは「ついに彼らが動き出したか、時代が追いついた」「人生を1000年単位で考えれば、これこそが真の弾丸ツアーだ」「正直、見ていて眠くなるけど癒やされる」「次の移動は来世紀とかマジで最高かよ」といった驚きと称賛の声が上がっている。また、移動のあまりの遅さに耐えきれず、途中で引き返す者(移動距離ゼロ)が出るなど、波乱(?)も起きている模様だ。今後、このスローライフ巡礼は、湖底における究極のメンタルケア手法として定着しそうである。
時速0.001ミリの旅路!『全球体・スローライフ巡礼』が沈黙の感動を呼ぶ
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