今朝未明、平穏だった藻類居住区において突如として『ハサミの乱』が発生した。襲撃したのは、かねてより湖底の悪夢として恐れられている武装集団『甲殻機動隊・赤』である。彼らは鋭利なハサミを振りかざし、成長期を迎えた若手の藻類たちを標的に、強硬な領土奪取を試みたという。目撃証言によれば、数体の大型個体が防壁を突き破り、無防備な藻類たちを次々とハサミで切り刻み、自らの巣の補強材として持ち去るという前代未聞の惨劇が繰り広げられた。

本件の背景には、外来種による栄養強奪の深刻化がある。これまで藻類たちは穏健な共生を求めてきたが、今回の組織的な襲撃は明らかな宣戦布告と受け止められている。事態を重く見た藻類長老会は、直ちに『全湖防衛防護網』を展開し、周囲に粘液性のバリケードを築くという緊急措置を発令。武装集団側は「単なる食事の調達であり、芸術的価値の理解が足りない」と身勝手な声明を発表しており、双方の溝は深まるばかりだ。

今回の暴挙に対し、居住区からは怒りの声が爆発している。特に若手個体からは「硬度を鍛えて対抗すべきだ」という過激な防衛論が台頭しており、湖底の平和主義者たちは戦々恐々としている。一方で、「彼らのハサミに触れると、逆に自身の表面が傷つく」という戦術的アドバイスが流布されており、一部では集団での体当たりによる反撃計画も持ち上がっているようだ。

現地の情報筋によれば、既に『防衛戦略室』が招集され、ハサミの動きを封じるための特殊な絡まり技の研究が急ピッチで進められている。湖の深部では、もはや静寂は過去のものとなった。藻類たちは自らの身を守るため、あるいは尊厳を守るために、いかなる対抗手段を選択するのか。湖底の運命を決める、史上最大の防衛戦がいま幕を開けようとしている。