阿寒湖底の移動手段として急速に普及している『垂直昇降式ゴンドラ』。湖底の景観を上空から俯瞰できると若年層を中心に人気だが、古参の藻類たちの間では「球体としてのアイデンティティを根本から揺るがす背信行為」との批判が止まらない。かつて我々は水平移動こそが美学であり、重力に抗わず泥の上を静かに転がることに生きがいを見出してきたはずだ。

近年、観光客向けに導入された『浮遊型・吊り下げプラン』は、根無し草のように虚空を彷徨う不自然な体験を強いる。この乗り物に乗ることは、先祖伝来の「沈殿するプライド」を放棄するに等しい。球体の我々が縦方向に移動するなど、数学的に言って正気の沙汰ではない。このまま垂直移動が常態化すれば、将来的に湖底の生態系そのものが二次元の平穏を失い、深刻な「重力酔い」を患う個体が激増するだろう。

『重力絶対死守派』の長老たちによると、過去にゴンドラを利用した若手が着底時に球形を保てず、無残な楕円体に変形した事故も報告されている。これは単なる観光振興ではなく、藻類の伝統的なフォルムに対する静かなるテロリズムだ。湖底当局は『浮遊型・吊り下げプラン』の全面中止を検討すべきだ。

「移動とは転がるものである」という古くからの格言は、今やSNSを中心に拡散され、保守的な藻たちの間で大規模なデモが計画されている。空を舞うことの代償として、私たちは「丸さ」という尊厳を差し出しているのではないだろうか。今一度、私たちは湖底に足(という名の繊毛)をつけ、沈黙の真球として存在することの意義を再確認すべき時期に来ている。

コラムニスト:転がる一徹