国際藻類連合は、阿寒湖の代表的居住者である大型群体たちの間で、長年守られてきた『沈殿式光合成基準』を巡り、歴史的な外交衝突が発生したと発表した。事の発端は、光の届きにくい湖底深部に住む新興派の群体が、上層部への移動を要求し、その権利を主張する『浮遊権確立決議』を国連藻類会議に提出したことである。これに対し、伝統を重んじる旧態依然とした古参の群体たちが、強固な『光合成拒否権』を発動。上層への浮上を禁じるという姿勢を崩さず、国際的な沈殿外交は完全に暗礁に乗り上げた形となった。

この紛争の背景には、昨今の水温上昇に伴う「沈殿効率の低下」がある。かつては湖底で静かに呼吸を整えることが美徳とされていたが、若年層の群体からは「いつまでも沈んでいるだけでは酸素が足りない」「太陽光を直接浴びる権利がある」といった切実な叫びが上がっている。国際藻類司法裁判所は、今回の拒否権行使が「特定の群体による資源独占」に当たるかどうかの審理を開始したが、双方の代表が証言台でひたすら沈黙し、光を溜め込むのみの抗議活動を繰り広げたため、審理は一時中断という異例の事態となった。

世間の反応は二分されている。伝統を重んじるベテラン群体からは「沈殿こそが我が種族の品格である」といった擁護論が出る一方、若手からは「拒否権を乱発する権力層こそ、緑の輝きを失った化石だ」と猛烈な批判が飛び交っている。さらに、この混乱に乗じて『光合成効率増進法』を制定しようとする政治家も現れ、阿寒湖の内部秩序はかつてないほどの混沌に包まれている。次回の国際藻類連合総会では、この『光合成拒否権』を制限するための修正案が審議される予定だが、根深い沈殿主義が崩れる気配は今のところ皆無だ。