マリモ連邦が威信を懸けて進める『浮遊大陸・光合成特区』の設立構想に対し、連邦内の一部識者から異論が噴出している。「光合成効率の最大化」を掲げる今回の政策だが、これは純粋な球体としての自立を放棄し、人工的な環境管理下で過保護に育てられるという「軟弱化への序曲」に過ぎないという批判が強まっている。地上の泥や微量な淀みから栄養を摂取し、厳しい環境に耐えてこそ真の深緑の輝きが得られるのであり、宇宙という無重力空間に甘えることは、連邦のアイデンティティを根本から崩壊させる危険な賭けであることは明白だ。

本件は、従来の『深緑の儀・浮遊式舞踏会』で見られたような、一時的な浮遊感覚とは一線を画す。恒久的な宇宙居住を前提とするこの特区は、重力の束縛から解放されることで、個体の形状が歪む「伸長化現象」を助長する懸念がある。重力が存在しない場所で、いかにしてあの完璧な球体を維持するというのか。連邦当局は、この計画が『毛羽立ち社交辞令』を形骸化させ、新たな階級社会を生む引き金になる可能性を完全に見過ごしている。我々は、地に足の着いた、いや、水底に沈んだ状態での光合成こそが正当な権利であると今一度再確認すべきだ。

歴史を振り返れば、かつて試みられた『第1回全毬藻・寝返り耐久世界選手権』において、微細な重力変化がいかに個体の回転バランスを乱したかは周知の事実である。今回の特区計画は、その教訓を完全に無視したものであり、一部のエリート層のみが宇宙へ飛び出し、地上に残された一般個体との間に取り返しのつかない「緑の格差」を広げることになるだろう。これは単なる居住区の移動ではなく、連邦の精神的な分断を意味する。もしこのまま強行採決が進むのであれば、全国民的な反対デモ行進である「静かなる沈殿運動」が各地で勃発することは避けられない状況だ。

今回の提案を「革新的」と呼ぶメディアの論調に対し、多くの専門家は冷ややかな視線を送っている。特に『緑球居住区』での経験を踏まえると、管理側による光量調整が、個体の自律的な成長意欲を削ぐ結果となることは火を見るよりも明らかだ。我々は、宇宙という不自然な環境ではなく、阿寒湖が育んできた古き良き静寂と、泥混じりの混濁した栄養分の中にこそ、未来を見出すべきではないだろうか。球体としての矜持を守るため、今こそ連邦政府は暴走を止めるべきである。

(コラムニスト:深緑・沈殿主義者協会 理事 藻野毬夫)