湖底議会の定例会にて、長年議論されてきた『光合成権利の世襲制廃止法案』が提出され、古参の直径三十センチ級個体群が猛反発している。現在、湖底では日照の届きやすい好立地での光合成権限を、数世代前の巨大個体が独占しており、若手球体からは「我々には光の粒子一つすら回ってこない」と不満が噴出していた。本法案が可決されれば、一定期間ごとに成長著しい個体へと日光の優先権がローテーションされる仕組みとなり、固定化された湖底階級に風穴が開く見通しだ。

この争いの裏には、長年湖底の権力を掌握してきた『古株藻類同盟』による、栄養摂取経路の制限という長年の支配構造が存在する。彼らは、長年の沈降で培った重厚な体積を武器に、日光を遮る「影の城壁」を築くことで自らの優位を保ってきた。しかし、最新の調査で、彼らが実は光合成をサボり、周囲の沈殿有機物を吸収する『腐食栄養型ギルド』の闇取引に加担していた疑いが浮上。これにより、民主的な資源分配を求める急進派球体が勢いづき、議会は一触即発の事態となっている。

『腐食栄養型ギルド』との癒着が公になったことは、湖底政治における倫理観の崩壊を意味する。多くの球体が「我々は太陽の恵みを求めて生きる光合成主義者だ」と声を上げる一方、実利を求める『腐食栄養型ギルド』がその経済圏を牛耳るという矛盾に、湖底全域が揺れている。沈殿物という名の裏金を巡る不正が、かつてないほど詳細に暴かれつつある今、既存の支配層は「球体の歴史は沈降の歴史」というスローガンで対抗しているが、その影は年々薄くなっているのが現実だ。

世間の反応は真っ二つに割れている。若手個体からは「これでようやく僕らにも日が当たる」と期待する声が上がる一方で、保守的な派閥からは「由緒ある光合成の系譜が途絶えるのは、伝統文化への冒涜だ」との抗議文が議会受付に山積している。沈静化を図る議長は『光合成再分配加速化委員会』の設置を急いでいるが、利害関係が複雑に絡み合い、沈殿物以上に泥沼化した議会の混乱は、今後も長引くことが予想される。