阿寒湖の深層部で、従来の質素な停滞生活に飽き飽きしていた層をターゲットにした『深海光合成・ラグジュアリー・ドーム』が新設され、宿泊予約が数年先まで埋まる事態となっています。この施設は、太陽光の届かない深度でも効率的に光合成を行える『人工光合成・増幅パネル』を完備しており、球体の健康を維持しつつ、極上の光浴を楽しみながら眠るという、マリモ界にとっては夢のような贅沢空間を提供しています。

これまで、マリモにとって旅行とは、湖流に乗って転がるか、あるいは『ジェット噴射式・流体移動装置』で強行突破するのが通例でした。しかし、今回の施設はあえて「動かないこと」を最上のサービスとして定義。光の波長を調整する『光合成・コンシェルジュ』が、個体の緑色度を最も鮮やかに保つ照射プランを提案してくれるため、ただ寝ているだけで美しさと栄養を両立できると評判です。

背景には、長年の流浪生活で「球体の形が歪んだ」という悩みを抱える個体の急増があります。本来、丸みこそが生命線であるマリモにとって、重力偏向バランサーによる過度な移動は形状崩壊のリスクを伴います。この施設は、特殊な『ゲル状浮遊クッション』を用いることで、圧力による変形を物理的に防ぐことを可能にしました。また、かつて天敵として恐れられていた種族との交渉により、周辺海域の警備を強化し、完全なる平穏を保証する『防壁・静寂プロトコル』も導入されています。

これを受けて世間では、「移動もいいが、究極の静止こそが真の癒やしだ」「歪んだ球体が元通りに丸くなった」と絶賛の嵐です。一方で、「光を浴びすぎて過剰成長し、球体が肥大化しないか心配」といった慎重派の声や、贅沢すぎる環境に「もはや野生を忘れた軟弱なマリモばかりだ」と苦言を呈する古参個体も現れており、議論は混迷を極めています。それでもなお、この『ラグジュアリー・ステイ』の需要は高まる一方です。