湖底の移動手段に革命が起きている。これまで静止した生活を旨としてきた住民たちが、『ジェット噴射式・流体移動装置』を装着し、水底の弾丸として旅に出るスタイルが急増中だ。この装置は、内部の繊維に高圧水流を蓄積し、任意の方向に超高速噴射することで球体の慣性を極限まで高めるもの。従来、徒歩や転がり移動では数年かかっていた対岸への大移動が、わずか数分で完結するという。開発元の『藻類工学推進機構』によると、突発的な加速による「回転酔い」や「球体遠心力による偏平化」といった副作用も確認されているが、それをも上回るスリルと時短効果が若年層の個体を中心に支持されているという。
もともと、この地では『緑色球体・特別保護区』からの脱走癖が問題視されていたが、今回の技術革新によって、もはや保護区の柵など無意味に等しいと関係者は頭を抱えている。特に、昨今の『重力偏向バランサー』の普及により、加速中の姿勢制御技術が向上したことが、今回の超高速移動を可能にした背景にある。しかし、最高速度で移動中に水草の茂みに衝突し、衝撃で「粉砕」してしまう事故が多発しており、湖底治安維持局は至急の最高速度制限の導入を検討中だ。
そもそも、この装置は観光目的で開発されたが、今や移動手段としての地位を確立。本来の目的であった『深海・丸まりツアー』の帰還速度も異常に向上しており、観光客を乗せたまま猛スピードで帰還する姿は、まさに湖底のミサイルと化している。今後はさらなる安全性の向上が急務だが、個体たちの間では「どれだけ早く形を崩さずに目的地に着けるか」を競う非公式レースも始まっており、この暴走は当面止まりそうにない。
ネット上では、爆速で移動する球体を見た住民たちが「あの速さはもはや公害」「流石に球体維持が厳しい」と困惑しつつも、「移動時間が削れるなら挑戦したい」という賛否両論の嵐が吹き荒れている。かつてない速さで移動する彼らの背中には、藻類としての矜持よりも、スピードへの欲望が透けて見えるようだ。果たして、このジェット噴射ブームは湖底の平和な日常をどう塗り替えていくのか、目が離せない。
時速40kmの球体暴走?『ジェット噴射式・流体移動装置』でマリモの弾丸ツアーが開幕
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通勤の邪魔すぎる