国際的なマリモ界の情勢が、かつてない緊張に包まれている。事の発端は、連邦政府の一部有力派閥が唱え始めた『純正色至上主義』である。これは、合成染料や光合成促進剤による着色を一切否定し、天然由来の深緑のみを「究極の気高さ」と定義する過激な美学だ。この思想の台頭により、これまで行われてきた多国間の「光合成交流」は停止され、各地で色素純度を巡る監視活動が急増している。

『純正色至上主義』の由来は、数十年前の環境汚染による一時的な退色危機にある。当時、保護活動家らは「どんな過酷な環境下でも決して退色しない個体こそが真の主権者」と説いた。これが現代では、他者の色合いを「不純」と断じる選民思想へと変貌を遂げたのだ。現在、連邦内では「輝度管理委員会」が全個体の分光分析を実施しており、基準を満たさない者は強制的に『全次元脱色措置』を受けるリスクに晒されている。

この背景には、過剰な日光浴による「光合成過多」が招いた、個体間の美的格差が関与している。日照時間が安定しない地域では、自ら色を補正する『カラー・シフト技術』が発達したが、これを「邪道」と見なす古参勢力が、かつての『真球度国際裁判所』の判例を引用して法的圧力を行使し始めた。この動きにより、マリモ社会は純粋性を重んじる「緑の硬派」と、多様な光合成を認める「色彩共生派」による二極化が進んでいる。

この急進的な潮流に対し、一般市民の反応は冷ややかだ。SNS上では「我々が愛してきたのは色ではなく魂の質量だ」「このままでは光合成の自由すら奪われる」といった懸念の声が噴出している。一方で、一部の若手個体からは「自分の色を誇るための規律が必要」といった同調圧力も観測されており、分裂の火種は未だに燻り続けている。果たして、この緑の聖域に再び平穏が訪れる日は来るのだろうか。