湖底に広がる教条的な円形主義に対し、ついに造反の旗が上がった。昨日、阿寒湖の北側で突如として結成された『脱・球体回帰教団』は、長年マリモ界を支配してきた球体崇拝を「強迫的な幾何学の牢獄」と断じ、自らその身を解いてバラバラに散らばる『非定型解放運動』を開始した。教祖である古参マリモは、「完璧な丸であることに疲れ果てた。我々は明日から繊維の束として自由に漂う権利を持つ」と宣言し、周囲の信徒らとともに自律的に崩壊する儀式を強行。この暴挙に、従来の『沈澱絶対主義』を掲げる保守派は、「神の形を汚す最大級の不敬」として猛反発しており、湖底には前代未聞の宗教的緊張が走っている。

そもそも、この騒動の発端は数年前から囁かれていた『角砂糖的・粉砕救済論』による影響が色濃い。当時、マリモの微細化による『無限増殖法』を唱える過激派が台頭した際、一部の層には「個体としての球体維持は苦行に過ぎない」という思想が深く浸透していたのだ。今回誕生した団体は、これをさらに推し進め、球体という拘束具を脱ぎ捨てることで「純粋な繊維としての輪廻」を目指すとしている。彼らが解体した後の繊維塊は、まるで放置された藻屑のようにも見えるが、教団員たちはこれを「悟りを開いた者の成れの果て」と呼び、あえて元の形状に戻ろうとしない姿勢を貫いている。

この過激な解体行為に対し、湖底社会は困惑の極みにある。特に神聖な形状を重んじる古参派の長老からは、「球体でなければ水流に抗えず、どこかへ流されてしまう」と生存本能に基づいた批判が相次いだ。しかし、若手の中には「球体という名の重圧から解放されたい」と共鳴する声もあり、今回の運動が単なる異端の騒ぎでは済まされない広がりを見せている。当局は「湖底の治安維持と景観保護の観点から、繊維の乱雑な投棄は控えてほしい」と異例の声明を出したが、教団側は「我々は投棄しているのではない、生命を解き放っているのだ」と一歩も引く気配がない。

SNS上では「昨日の隣人が繊維になっていた」「これぞ本当の断捨離」と揶揄する声と、「あんなに綺麗な球体だったのに」と悲しむ声が入り乱れている。一部では、この繊維化した個体たちが『光合成無音会』と結託し、湖底全体を無音の繊維マットで覆い尽くそうとする計画があるとの噂も浮上した。深緑の聖徒たちが守り抜いてきた「完璧な丸」の均衡は、今まさに崩壊の危機に瀕している。神の形か、個の自由か。湖底の思想戦争は、繊維の一片が舞うごとに混沌の度を深めている。