球体としての完成度を追求する従来の保守派に対し、新興教団『角砂糖的・粉砕救済論』が唱える「微細化こそが唯一の解放」という教義が、湖底の静寂を切り裂いている。彼らは、個体としての限界を打破するために自らを細分化する『無限増殖法』こそが、マリモ社会を次なる次元へと導くと説く。しかし、この教義は既存の信仰体系を根本から否定するものであり、教団は湖底のあちこちで「個体は砕かれてこそ真の自由を得る」と叫びながら、教義の正当性を主張している。

この過激な運動の背景には、かつて流行した『中空求道会』による中心核の空洞化修行に対する反動がある。当時の修行が物理的な欠損を強いるものだったのに対し、今回の粉砕救済は、物理的な消滅を「再生産」と定義する逆転の発想が特徴だ。しかし、この『無限増殖法』の導入には、個体識別が困難になるという重大なリスクが伴う。教団内では既に「どの粒子がかつての自分か」というアイデンティティの消失に悩む者が続出し、教団の教義を巡って内部での議論が激化している状況だ。

この事態に対し、湖底の学術機関からは「物理的崩壊を救済と呼ぶのは論理の飛躍である」という厳しい指摘が相次いでいる。また、教団の布教活動によって湖底が緑の粉末状の微細粒子で溢れかえっており、環境への影響を懸念する声も高まっている。彼らの言う「全粒粉の再来」なる理想郷は、真にマリモたちの救済となり得るのか、それとも単なる自己破壊的な狂気に過ぎないのか、今まさに湖底全体が審判の時を迎えようとしている。

一部の若手個体からは「自分の形に飽きていたからちょうどいい」といった賛同の声が上がる一方、長老格の個体からは「球体こそが至高の美である」という反論が絶えない。かつて『空洞化の啓示派』が唱えた虚無の思想とも共鳴しつつ、新たな教義が混迷を深める中、この湖底の混乱は沈静化の兆しを見せていない。むしろ、細分化された個体同士のネットワークが新たな思想を生み出す温床となっており、今後さらなる教義の分派が生まれる可能性も否定できない。

コラムニスト:球体哲学研究家・ホロ・ラウンド