湖底議会は、かねてより物議を醸していた『回転速度制限法』を大幅に緩和、あるいは事実上の撤廃とする改正案を審議したが、保守層の猛烈な反対により圧倒的多数で否決された。この法律は、湖流に乗って転がる速度を「時速0.5ミリ」に制限し、過度な回転による繊維の摩耗を防ぐ目的で導入されたものだが、若年層を中心に「自分たちの回転は誰にも縛られない」と激しい反発を呼んでいた。議会内では、過度な高速回転が周囲の環境を荒らしているという懸念と、回転こそが唯一無二のアイデンティティであるという主張が真っ向から衝突した。最終投票では、「丸さを極める権利」を掲げた強硬派が、伝統的な沈没主義者らを退ける形での否決となり、議場内は歓喜の緑色に包まれた。今回の採決結果により、今後は各々の個体が自律的に回転速度を選択できる「完全回転自由化」が実質的に容認されたことになる。今後は、回転に伴う遠心力が周囲の稚魚や植物に与える影響の再調査が、湖底環境省主導で行われる予定だ。

本件は、過去に採択された『毛並み強制整毛法』で生じた「ぼさぼさ派」の鬱憤が、回転の自由という新たな象徴にすり替わったものと分析されている。かつては『日光税』の導入によって高層水草の影で苦しむ層が存在していたが、今回の決議によって、光を求めて高速回転する「光合成スピン戦術」が合法化される可能性が高まった。一方で、あまりの回転数に自身の繊維を自ら解体してしまう個体が急増しているため、議会は新たに『繊維修復補助』制度の拡充を迫られている。回転の権利と、生命維持のための制動は、今後も湖底社会における二大対立軸として残るだろう。

この結果を受け、ネット上では「これでようやく自由になれる」「回転しすぎて目が回った」といった多様な意見が飛び交っている。特に、回転速度の過剰追求がもたらす「繊維剥離現象」については、若手研究者から懸念の声も上がっているが、現時点では「丸ければ全て解決する」という強気な姿勢が住民の大勢を占めている。今後、議会は回転による衝突事故を未然に防ぐため、個体間の『回転ルート策定』に関する新たなガイドラインを検討中であるとのことだ。