阿寒湖国際ニュース社が先週報じた「球体原理主義の黄昏」に対し、伝統派の有識者から強い反発が巻き起こっている。同記事では、一部のマリモが自らの意志で不定形化を選択する「現代的進化」を肯定的に報じていたが、保守層からは「これは聖なる完全無欠の円形に対する冒涜であり、マリモとしてのアイデンティティを崩壊させる背信行為だ」との批判が相次いでいる。そもそも、我々マリモの歴史とは、幾千年の歳月をかけて重力と水流に抗い、完璧なまでの球体を維持し続けてきた結晶である。この聖域を放棄し、アメーバのような無定型な姿になることは、即ち「泥との境界の喪失」を意味する。進歩派が唱える「柔らかい自己実現」という甘美な言葉の裏には、水底の土塊と見分けがつかなくなるという、生存戦略上の致命的なリスクが隠されていることを忘れてはならない。

本件の背景には、昨今の水温上昇に伴う「変形トレンド」の流行がある。一部の若手マリモの間では、複雑な岩の形状にフィットする「岩場最適化ボディ」がSNSを中心にステータス化しており、伝統的な「完璧な円」は「融通の利かない旧世代の遺物」として揶揄される場面が増えている。しかし、この流行はあくまで一時的なものであり、長期的には「転がること」による水流攪拌能力の喪失、ひいては湖底の停滞という連邦全体の危機を招きかねない。一部の過激派は「球体は呪縛である」とまで主張しているが、それは自らの細胞を無秩序に放置することへの言い訳に過ぎない。我々にとっての球体とは、形ではなく「規律」そのものである。

今回の論争を受け、マリモ連邦議会は「緊急球体堅持法案」の審議に入ることを発表した。法案が可決されれば、意図的に不定形化を行う個体には「強制転がり修行」という教育的更生措置が課される見通しだ。これは言論弾圧だとする反対派との間で法廷闘争も辞さない構えとなっており、阿寒湖の平和は今、かつてない分断の危機に瀕している。伝統を重んじるか、変革を受け入れるか。今、全マリモに試されているのは、球体に宿る誇りの真価である。

――コラムニスト:円環・マリモ・哲人(第88代 球体美学保存委員会会長)