阿寒湖の底で、かつてない悲劇と奇跡が同時に発生している。これまでマリモの天敵として湖底の覇権を争っていたウチダザリガニたちが、一転して「マリモ専門の調教施設」を開業したのだ。かつては食べたりバラバラにしたりしていたはずの彼らが、今やマリモを優しく(?)つまみ上げ、湖底の平らな岩の上で絶妙なバランス感覚を求める「玉乗り」の特訓を強いている。ザリガニたちの目的は、マリモをより高く、より安定して転がせる「スーパースター」へと育成することにあるという。湖底には、ザリガニのハサミで優雅にガイドされながら、円を描いて高速回転するマリモたちの姿が散見されるようになった。

この驚くべき事態の背景には、ザリガニ側の急激な価値観の変容がある。彼らは捕食するよりも、卓越したバランス能力を持つマリモを「見世物」として囲い込み、他の湖の生物から観覧料を取るビジネスモデルに転換を図ったのだ。マリモ側としても、食べられる恐怖から解放され、むしろ「トップアスリート」としての地位を得ることに誇りを感じ始めている節がある。しかし、この強引な指導体制には賛否が分かれており、あまりのスパルタっぷりに、たまらず転がり逃げ出すマリモも続出している。水産専門家によれば、この「ザリガニ・コーチング」によってマリモの繊維が異常に強く密に絡み合うようになり、結果として「鋼鉄の硬度を持つマリモ」が誕生する懸念もあるという。

世間からは「ザリガニがビジネスを覚えたせいで阿寒湖の秩序が崩壊している」「食うか食われるかの関係が、いつの間にかマネジメント関係に進化していて笑う」「マリモの球体維持能力が向上してて草」「次はマリモのサーカス団でも作る気か」といった困惑と期待の声が入り混じっている。一部の保守的なマリモからは「静かに光合成をさせてくれ」という切実な悲鳴も上がっているが、今の阿寒湖の勢いは誰にも止められそうにない。ザリガニが作ったチケットブースの前には、今日も好奇心旺盛なエビたちが長蛇の列を作っており、阿寒湖のエンタメ化は加速する一方である。