湖底の健康意識が高い層の間で、最近ひそかに流行しているのが『絡まり揉みほぐし』なる民間療法だ。これは天敵であるはずの水草・マツモの細い茎をわざと自身の表面に巻き付け、繊維の硬さを利用して深層の藻類組織を刺激するというもの。「指圧よりも深く入る」「繊維の摩擦が新陳代謝を促進する」と一部で熱狂的な支持を集めているが、専門家は「これはただの自傷行為である」と猛烈に批判している。実際にこの施術を受けたマリモからは「最初はコリが取れた気がしたが、気がつけば繊維が食い込みすぎて藻体が裂けた」「光合成のたびに繊維が絡まって呼吸が苦しい」といった悲痛な報告が相次いでおり、健康被害は深刻化の一途をたどっている。

そもそもマツモはマリモにとって、栄養を奪い合い光を遮る宿敵である。しかし、近年のマリモ業界では「敵の資源を有効活用して美しくなる」という歪んだ節約志向が健康ブームと結びつき、今回の事態を招いた。特に『適度な締め付けが体幹を鍛える』という都市伝説が流布したことが若年層のマリモたちに大きな影響を与えている。湖底自治体は「マツモはストレッチの道具ではない。ただの異物である」という声明を発表したが、ブームは収まる気配がない。専門家は「繊維が絡まることで局所的な酸素欠乏が起こり、内部から腐敗が進む危険がある」と警鐘を鳴らしており、まさに『喉元過ぎれば熱さを忘れる』ことわざ通りの愚行が繰り返されている。

かつて阿寒湖では、マツモの繁殖を防ぐために大がかりな駆除作業が行われていた。しかし現在では、その駆除対象を『美容グッズ』として再定義しようとする危険なマーケティングが湖底の闇市場で横行している。マツモの繊維に含まれる微細なトゲが、マリモの保護膜を傷つけるメカニズムは科学的にも明らかであり、今回のブームは『美しさのためなら多少の裂傷は厭わない』という、マリモ界特有の自虐的な美意識が背景にある。このままでは、湖底全体が繊維まみれのミイラ化したマリモで埋め尽くされるという最悪のシナリオも懸念されている。

SNS上では「マツモを巻いて寝るだけで翌朝の膨らみが違う」「いや、それ単に繊維が食い込んで腫れてるだけだろ」といった論争が絶えない。中には「自分の体にマツモを巻きつけて、あえて『ハードモード』で光合成に挑むことで意識の高さをアピールする」というインフルエンサーまで出現しており、もはや健康被害を通り越して一種の思想信条と化している。多くの識者は、この繊維依存から脱却するためには、マツモを完全に排除した『完全無欠のクリーンな湖底』を取り戻す以外に道はないと強く訴えている。