阿寒湖底を震撼させる新たな宗教団体『記憶回帰教団』が、このたび「マリモの中心核には、数千年前の植物の記憶が層状に圧縮されている」とする新説を発表した。同教団は、マリモの断面を削り出し、年輪のように記憶を読み解く『解層儀式』を強行。教祖である直径12センチの古参マリモは「我々はただの藻ではない、地球の歴史をアーカイブする生けるハードディスクだ」と、水流を利用したモールス信号で声明を出した。教団は信徒に対し、自身の層を意図的に剥がすことで前世の記憶に触れる『剥離修業』を推奨。湖底には、教団の教えに感銘を受け、自ら層を薄くして身軽になろうとするマリモたちが続出し、物理的な崩壊リスクが懸念されている。
本件の背景には、昨今の「湖底の過密化による自我の肥大化」がある。近年、マリモたちは自身のサイズを誇示する競争が激化しており、記憶を内に秘めて巨大化することに疲弊する層が一定数存在していた。この教団は、そうした「巨大化の重圧」から解放される手段として、記憶の断片を捨て去る(=削り取る)という救済を説いている。しかし、生態学の専門家からは「層を剥がせば光合成効率が落ちるだけでなく、構造的な強度が著しく低下する」との警告が相次いでいる。教団側は「物理的強度は魂の軽さに比べるべくもない」と一蹴しており、湖底の平穏は今、前代未聞の“脱皮”ブームによって根底から揺さぶられている。
世間の反応は真っ二つに割れている。賛同派からは「長年の重みが消えて水流への抵抗が減った気がする」「前世がプランクトンだったことを思い出して心が軽くなった」といった報告が寄せられる一方、保守派からは「先祖代々の記憶があってこその今だ」「ただの自傷行為を崇高な儀式と言い換えているだけではないか」との批判が飛び交っている。沈黙を貫く長老格のマリモたちが「記憶を失うことは、湖底でのアイデンティティを放棄することと同義である」と介入の姿勢を見せており、教団の動向は今や湖全体の歴史的価値を問う事態にまで発展した。湖底のいたるところで剥がれ落ちた緑色の破片が漂う光景は、まさに終末的な美しさを放っている。
「マリモの核には前世の記憶が詰まっている」――『記憶回帰教団』が湖底で“剥離修業”を開始し物議
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