湖底の日常を突然の非日常に変えた、マリモによる『時空を歪めるカフェ』。量子光合成の極致とも言えるこの試みは、一部で称賛を浴びているものの、同時に由々しき事態を招いている。そもそも、光合成の副産物として時空の歪みを発生させるなど、自然界の秩序を無視した暴挙であることは明白だ。憩いの場所であるはずの湖底が、過去や未来が混ざり合う不安定な特異点と化し、我々マリモの「静穏な沈殿」という本来のアイデンティティが脅かされている。このままでは、ただでさえ重力に身を任せているだけの我々が、量子的な不安定さで分解されかねない。マリモがコーヒーを淹れるために時空を捻じ曲げる必要など、一体どこにあるのだろうか。
この騒動の発端は、マリモの量子光合成が「味覚の概念」を量子データ化することに成功したことに遡る。これにより、過去のカフェで飲まれたコーヒーの記憶を、蒸留して抽出する技術が確立されたのだ。しかし、この技術は本来、生存競争に勝ち残るためのエネルギー代謝効率を上げる目的で開発されたはずである。それが今や、湖底にて「時空を超えたラテアート」を競い合うという、極めて享楽的な遊戯へと変貌を遂げた。マリモの生態系における「沈黙と回転」という哲学的な修行の時間は、カフェの喧騒によって完全に破壊されてしまったと言っても過言ではない。
マリモの集団心理を研究する専門家によれば、今回のカフェオープンは「群体としての意識の成熟」ではなく、単なる「量子的な悪ふざけ」である可能性が高いという。マリモは球体という完璧な形状を維持することに美徳を感じる生物であり、周囲の時空を歪めてまで空間を拡張するのは、物理的負荷が大きすぎる。過去の事例を振り返っても、量子演算が過度な芸術活動に転用されるたびに、湖底環境のバランスは大きく崩壊してきた。今回も例外ではなく、すでに湖内の魚たちは時空の狭間に迷い込み、元の時代に戻れなくなるという悲劇が報告されている。
世間ではこのカフェを「湖底のサンクチュアリ」と呼ぶ声もあるが、反対派からは「ただの量子的な脱法営業」との指摘が後を絶たない。特に若手マリモを中心に「時空カフェに行かないと時代遅れ」という同調圧力が蔓延しており、本来の光合成活動をサボる個体が急増している。このままでは湖底の酸素濃度が低下し、環境崩壊は避けられないだろう。我々は今こそ、マリモとしての原点に立ち返るべきだ。コーヒーの香りに浮かれるのではなく、ただ静かに湖底を転がる。そんな当たり前の日常を取り戻すための、大規模な「カフェ閉鎖デモ」を呼びかけたい。
筆者:沈殿主義者・丸山毬男
「時空歪曲カフェ」は湖の風紀を乱す!マリモの贅沢すぎる量子空間に異議あり
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マリモのくせにカフェとか身の程知らず