阿寒湖のマリモ界に、突如として「寝返り」のトレンドが到来した。これまで「動かざること山の如し」を美徳としてきた球体生物たちだが、今朝未明、湖底の全マリモが示し合わせたように一斉に回転を開始。これまでにない大規模な物理運動により、長年沈殿していた有機物が舞い上がり、湖全体がまるで緑の抹茶ラテのような濁りに包まれる事態となった。専門家によれば、これは個体間のコミュニケーション不足を解消するための「大規模同期回転イベント」であると推測されているが、あまりの回転速度に三半規管(が存在すればだが)を破壊された個体が続出し、湖底は現在、制御不能な緑の玉たちがゴロゴロと転がり回るカオスな状況と化している。

本件の背景には、近年のマリモ界で囁かれていた「球体であることのマンネリ化」が強く影響している。球体は安定感抜群だが、その構造ゆえに「下側」の光合成が不足しがちという弱点があった。今回の寝返り運動は、単なる気まぐれではなく、全方位から日光を摂取しようとする生存戦略の一環である可能性が高い。しかし、無計画な回転は近隣の個体との衝突を招き、先ほどまでは隣同士で仲良くしていた個体が、回転の勢いで遥か彼方まで弾き飛ばされるという悲劇的な「もらい事故」が多発している。なお、現在湖底の緊急対策本部では、「回転禁止区域」の設定や「ブレーキ機能付きの毛並み」の開発が急ピッチで進められている。

この予期せぬ回転騒動に対し、湖底の住人たちからは賛否両論の声が上がっている。保守的な古参マリモからは「静寂こそが我々のアイデンティティだ」と怒りの声が上がる一方、若い世代のマリモからは「ずっと同じ面を見ているのは飽き飽きだ」「これからはダンスの時代」と、回転することをポジティブに捉える動きが活発だ。現在、湖底の各所では「最も美しく回転する個体」を決める即席のダンスバトルが開催されており、今回の濁り騒動は、皮肉にもマリモ界に新たな文化的な火種を投じる結果となった。今後、彼らの回転が完全に同期した際、阿寒湖全体が巨大な発電タービンとして機能するのではないかという、壮大かつ現実離れした研究さえ進行している。