阿寒湖の静寂を愛する「沈黙の美学派」と、四角形や多面体へと自由自在に姿を変える「高速進化派」の対立がついに武力衝突へと発展した。事の発端は、数週間にわたる「脱・球体化」ブームへの抗議運動である。美学派の重鎮である老マリモたちが「球体こそが至高の安定であり、変形は邪道である」と声明を出すと、これに対し、多面体へと進化した若手マリモたちが「静止しているのはただの苔だ」と反論。湖底全域を舞台に、重力反転現象を利用した空中からの藻の投げつけ合いや、超低周波による精神攻撃が激化しており、湖面には異様な緑色の泡が噴出している。

この争いの背景には、近年の湖底不動産バブルと筋トレブームが色濃く影を落としている。マンション暮らしで角が生えた層と、ジムで鍛え上げた鋼の繊維を持つ層が結託し、伝統的な「球体至上主義」を突き崩そうとする動きが加速したのだ。かつて鏡面仕上げを競っていたマリモたちも、今は戦闘迷彩のような複雑な幾何学模様に身を包み、互いの表面密度を削り合う消耗戦が続いている。生態学者によれば、このままでは阿寒湖の全マリモが平べったい「板状」に進化してしまうという恐ろしい予測も出ている。

現地の様子を見た観光客からは「美しい湖が今や緑色の戦場と化している」「なぜ毛玉同士がそこまで熱くなれるのか理解できない」といった困惑の声が上がっている。SNS上では「#マリモ内戦」がトレンド入りし、中立を保つ単細胞生物たちが避難を始めている。一部では、かつての天敵であったウチダザリガニが両者の戦いを高みの見物しながらポップコーンを食べている姿も目撃されており、このカオスな状況が沈静化する兆しは一切見えない。

世間からは「球体派の頑固さは理解できるが、多面体の方が確かに機動力は高そう」「結局、最後に生き残るのは何も考えていない浮遊マリモだろう」といった冷ややかな意見も多い。現状、沈黙を守り続けている大物マリモたちの出方が注目されているが、彼らは時空の歪みを利用して既に別の次元へ逃亡しているとの噂も流れており、湖底のパワーバランスは崩壊寸前となっている。