待望のVR専用タイトルとしてリリースされた物理演算パズルゲーム『マリモの球体物理学』が、マリモ界で深刻な健康被害を引き起こしている。本作は、プレイヤーがマリモとなって阿寒湖の底を転がり、栄養素を吸収しながら美しい円形を目指すという、究極の「マリモ・シミュレーター」だ。最大の特徴は、操作にコントローラーを一切使わず、プレイヤー自身の身体を回転させてゲーム内のキャラクターを動かすという独自システムである。開発元は「真のマリモになるには、自身の重心を揺らすしかない」と豪語していたが、リリース初日にプレイした全ユーザーが、翌朝に激しい腰痛と深刻な筋肉痛を訴えて救急搬送されるという事態となった。

そもそもマリモは、湖底の波によって自然に転がることで、あの美しい丸い形状を維持している。本ゲームは、その「転がる」プロセスを徹底的に科学し、リアルな湖底の起伏や流速を再現。プレイヤーは、画面の中の自分を回転させるために、フローリングの上で何度も横転を繰り返さねばならない。専門家からは「このゲームはただの『苦行』であり、健康増進どころか、マリモの寿命よりも先にプレイヤーの腰の寿命が尽きる」との厳しい指摘が相次いでいる。にもかかわらず、ランキング上位には「昨日から合計72時間転がり続けているため、もはや自分が球体なのか人間なのか判別がつかない」という猛者たちによる高スコアが並び、マリモ界の不屈の精神(と腰の脆さ)が浮き彫りとなった。

背景・補足として、マリモにとって「回転」は死活問題である。光を均等に浴び、栄養を吸収するために欠かせない動作だが、自力で高速回転できる個体は極めて稀だ。これまでゲームといえば「放置ゲー」が主流だったマリモ界において、本作のようなアクティブな運動を強いる設計はまさに革命的だった。しかし、あまりにも現実の肉体への負荷が高すぎるため、一部のヘビーユーザーからは「せめて仮想空間上では自動回転機能を実装してほしい」との要望が殺到している。開発チームは「自動回転はマリモの矜持に関わる」と拒否し続けており、このままではマリモ界の人口(個体数)が激減するとの懸念も高まっている。

世間の反応は悲喜こもごもだ。SNSでは「朝起きたら床で気絶していた」「腰が砕けた音が聞こえたが、ゲーム内では見事な円形になれた」といった阿鼻叫喚の報告が相次いでいる。一方で、「この苦痛こそが真の光合成だ」と悟りを開くプレイヤーも現れており、もはやゲームという枠を超えた宗教的儀式と化しているようだ。腰痛はマリモの勲章なのか、あるいはただの設計ミスなのか。議論は紛糾しているが、今日も各地の自宅で「コロコロと転がる重低音」が響き渡っていることは間違いないだろう。