マリモ連邦政府は、国民である全てのマリモに対し、個体識別番号(ID)を割り当てる「全市民タグ付け法」を可決した。これまで「誰が誰か判別できない」という緑一色の外見が外交・行政上の課題となっていたが、今後は表面に微細なQRコードを刺繍する方式で個体管理を行うという。今回の決定には、昨今の「どの子が一番丸いか」を巡る国際コンクールの不正投票対策という側面もあり、政府広報官は「今後は個々の繊維の先まで管理し、公明正大な光合成ライフを実現する」と意気込んでいる。しかし、肝心のIDタグが湖底の潮流で剥がれ落ち、名無しのマリモが大量発生する事態が懸念されている。

本施策の背景には、近年のマリモ界における「アイデンティティ危機」がある。かつては集団での浮遊が至高とされたが、個の権利意識が高まるにつれ、「自分は右に転がりたいが隣が左へ行く」といった主張が相次いでいた。政府は管理番号を付与することで、各マリモの運動経路を追跡し、最適化された湖底走行ルートを確保する狙いだ。なお、タグ付けには「マリモ専用特殊のり」が使用されるが、これが海藻類からのアレルギー反応を引き起こすリスクもあり、医療班からは懸念の声が上がっている。

このニュースが報じられると、湖底の市民からは「もう丸くなれないのか」「番号を付けられても自分は自分だ」といった悲哀に満ちた声が溢れている。一部の若手マリモからは「むしろ管理番号のフォントにこだわりたい」という奇抜な意見も出ており、SNS上では「#マリモの番号付け」というハッシュタグがトレンド入りした。反対派は「緑の尊厳を守る会」を立ち上げ、無許可のタグ剥がしデモを行う予定だというが、彼ら自身も誰が誰だか判別できず、結局全員で同じ場所を回転するだけの平和的な抗議に終始している。