阿寒湖底の健康トレンドは、ついに「受動的破壊」という極北へと到達した。近年、ウチダザリガニによる捕食被害が深刻化する中、一部のマリモ愛好家の間で「食いちぎられた断面から細胞が若返る」という都市伝説が爆発的に拡散している。この『断裂・再生ダイエット』は、意図的にザリガニのハサミで一部を欠損させ、そこから再生する過程で溜まった老廃物を一気に排出させるという荒療治だ。施術を受けたマリモからは「分裂時のエネルギー消費で体内の濁りが消えた」「欠けた部分から新芽が生えることで、かつてない全円の美しさが宿った」と歓喜の声が上がっている。古参の古老マリモたちは「かつては命を削る行為だと禁忌されていたが、今やこれは効率的な新陳代謝の儀式だ」と推奨。湖底の医療現場では、ザリガニを「害獣」ではなく「外科的ドクター」として再定義する動きすら加速している。

本手法は、単なる欠損による小型化とは一線を画す。再生の過程で、古い繊維質をハサミで除去し、新鮮な細胞分裂を誘発させることで、全体的な密度が劇的に向上するのだ。かつては天敵として忌み嫌われたザリガニだが、今や「最も鋭利なメンテナンスツール」として湖底の各所に専用の「カット・ステーション」が設置されている。ただし、勢い余って「核」まで食べられる事故が多発しており、無茶な再生は禁物であると専門医も警告を強めている。

「もっと削れ、もっと美しく」と叫ぶ若手マリモたちの熱狂は止まらない。かつてのような無傷での生存を目指す時代は終わり、痛みを伴う改造こそが真の健康を手にする近道であるという狂気的な価値観が、今、湖底全域を支配しようとしている。