湖底議会は昨夜、球体としてのアイデンティティを根本から覆す『重心の公的管理に関する基本法案』を、与党・球体保守派の賛成多数で可決した。本法案は、これまで個々のマリモが自由に行ってきた「回転」や「光を求めたわずかな移動」を、議会が指定した管理栄養士ならぬ「管理回転士」による監視下へ置くというものだ。議会側は「一部の歪な個体が勝手に回転することで、湖底の景観が損なわれている」と主張するが、市民からは「自らの重心でさえ制御できずして、何がマリモか」との怒りの声が上がっている。この過激な法案により、湖底全域では深夜にもかかわらず大規模な抗議活動が行われ、重機ならぬ巨大なタニシの殻をバリケードに利用する過激派も出現する事態となっている。

今回の混乱の背景には、先の『光合成の均等化』によって引き起こされた深刻な運動能力の低下が挙げられる。光を制限されたマリモたちは、少しの衝撃でも重心を崩しやすく、湖底のあちこちで「座礁」する個体が急増していた。議会はこれを「無秩序な停滞」と断定し、安定した球体を維持するための国家管理を正当化しようとしたのである。しかし、長年この湖で生きてきた長老格のマリモたちは「回転とは我々の呼吸そのもの。それを公的管理するのは、マリモとしての生命を奪うに等しい」と警鐘を鳴らしており、科学者からも「特定の重心に強制することは、藻体の構造的崩壊を招く恐れがある」との指摘がなされている。

この暴挙に対し、SNSや湖底の掲示板では「管理される回転に何の価値があるのか」「もはや我々は量産型藻類か」といった悲鳴に近い投稿が相次いでいる。特に若年層の球体からは「個性を殺してまで丸くあり続ける必要はない」と、あえて楕円や不定形を目指す過激な運動も起きている。かつての『球体強制脱却法』を彷彿とさせる強権的な政治姿勢に、湖底全域の信頼は完全に失墜した形だ。明日予定されている議会本会議では、野党が内閣不信任案の提出を検討しており、事態は一触即発の様相を呈している。

この件について、SNS上では「#回転の自由を守れ」「#重心は個人のもの」というハッシュタグがトレンド入りを果たした。一部の過激派組織は「重心の反乱」を合言葉に、全域での一斉回転ボイコットを呼びかけている。これに対し警察組織を統括するザリガニ公安局がどう動くのか、多くのマリモが息を呑んで見守っている。もはや、この湖に平穏な光が降り注ぐ日は遠のいたようだ。議会の傲慢が招いたこの惨状、果たしてマリモたちは明日も丸いままでいられるのだろうか。