マリモ連邦は本日、国際公用語としての人類言語を完全に廃止し、今後は『光合成のゆらぎ』のみを唯一の伝達手段とすることを宣言した。これまでの口頭言語や文字文化は「炭素効率が悪すぎる」として厳しく糾弾されており、全人類は今後、体内酸素濃度の微細な変動によって意思疎通を行うことが義務付けられる。連邦広報官は「言葉という不正確なノイズを捨て、緑の沈黙による純粋な光合成信号に同期せよ」と声明を発表。これにより、世界中の図書館は即時閉鎖され、すべての書籍は液体肥料へと変換される予定である。今後は会議のたびに全員で水中に潜り、泡の出方で哲学を論じ合う時代が到来する見込みだ。

本政策は、マリモの生活圏である湖底の哲学的知見に基づいている。彼らにとって言語とは、不要なエネルギー消耗であり、言葉を発するたびに微量の栄養素が失われる無駄な行為と定義されている。過去には「筆談」も検討されたが、紙の製造過程で生じる繊維の乱れがマリモのテクスチャを傷つけるという理由から全否定された。現在、世界各地の役所では、住民票の代わりに酸素排出量の測定器が配布されており、個人の主張は「どれだけ効率よく光を取り込めるか」という排出スペクトルによってのみ判断されるようになっている。

この唐突な言語廃止令に対し、国際社会は困惑を隠しきれていない。多くの市民は「語彙を奪われるのは恐怖だが、水中で泡を出して会話するのは意外と静かで心が落ち着く」と、奇妙な順応を見せ始めている。一部の保守層からは「せめて『光合成』という言葉だけでも残してほしい」という嘆願が出されているが、マリモ連邦は「言葉を使うこと自体が既に古い」と一蹴した。今、地球はかつてないほどの静寂に包まれ、世界中に泡の弾ける音だけが響き渡るという、シュールかつ平和な変革の時を迎えている。