南部陽一郎は2008年にノーベル賞を受賞。*1
典型的には,強磁性体に対して,ハイゼンベルク(W. K. Heisenberg)がスピン回転対称性の自発的破れを1920年代に論じた。これに対し,超伝導が20世紀初頭に発見されて以来,その機構は約半世紀にわたる謎だったが,1957年にバーディーン(J. Bardeen)らによるBCS理論が出て,電子2個のペアのボース凝縮という描像を与えた。ここで自発的に破れているのは,ボース凝縮体を記述する波動関数の,位相の任意性(ゲージ対称性;上田教授の記事を参照)である。これに伴い,BCS基底状態からの励起は質量(エネルギー・ギャップ)をもつことになる。南部理論の偉大なところは,このようなゲージ対称性破れの描像が,一般のゲージ場理論としての素粒子論に適用できる,というアイディア(Swedish Academyの言葉では,bold assumption)を,BCSの数年後にして構築したことといえる。*2