煎餅職人を自称する羽田野健一さん(42)は、市販の素材を使うことに限界を感じ、自宅の庭を実験場として開放した。当初は米を植え、醤油の原料である大豆と小麦を育てていたが、「収穫までの待ち時間がもどかしい」という理由から、大胆な計画を実行に移した。

羽田野さんが最初に行ったのは、庭の土壌改良である。ホームセンターで大量の醤油を購入し、土と混ぜ合わせることで、大豆が芽を出した瞬間に醤油の風味を吸収できる『先行浸透農法』を開発した。近隣からは「醤油の香りが強すぎて、近所全体が居酒屋のカウンターのようになっている」との苦情が寄せられたが、羽田野さんは「むしろ歓迎されるべき環境だ」と意に介さない。

次に彼が着手したのは、米の硬さ調整である。焼く工程で硬さを出すのが一般的だが、羽田野さんは「育つ段階で鍛えるべきだ」と主張し、庭に巨大な重石を設置。稲穂が重圧に耐えながら育つことで、収穫した時点で既にバリバリとした食感を持つ『超高密度米』の栽培に成功した。

しかし、収穫した稲をそのまま食べてみた羽田野さんは、一つの重大な事実に気づく。「これ、ただの醤油を吸った固い木材だ」。期待していた米の甘みは完全に醤油に負け、食感はもはや建築資材に近い。情熱が空回りした結果、庭は食用とは到底呼べない『醤油味の木板』を量産する工場と化した。

現在、羽田野さんはその木板を加工し、家の外壁を煎餅でリフォームする計画を立てているという。本人曰く「台風が来てもお腹が空かない家。災害対策としても完璧です」と語るが、昨日の雨で壁がふやけ始め、彼の庭からは甘く香ばしい匂いと共に、近所の野良猫たちが大挙して押し寄せる様子が確認されている。