会社員の大山健二郎さん(34)は、毎朝のトーストにバターを塗る数秒間が「人生で最も非生産的な時間」だと感じていた。そこで彼は、ホームセンターで買ってきた廃材と、かつてラジコンに使っていた強力なモーターを組み合わせ、全自動トースト塗りたくりマシン『バター・ドミネーター』を開発した。
開発のコンセプトは「バターをパンに塗るのではなく、叩き込む」。しかし、試運転のスイッチを入れた瞬間、惨劇の幕が上がった。マシンは容赦なくバターの塊を射出し、パンの表面に時速120キロメートルで叩きつけたのである。
「最初は計算通りだと思いました。しかし、モーターの回転数が予想を遥かに超えていたようです」と大山さんは当時を振り返る。マシンが吐き出す強力な遠心力により、食パンは耐えきれずに空中分解。キッチンの壁という壁にバターまみれのパン屑が突き刺さるという、現代アートのような光景が広がった。
さらに誤算は続いた。機械が停止不能の状態に陥り、予備のバターを次々と発射。壁一面が黄色く染まり、その光景はまるでバターの惑星に着陸した探査機のようだった。大山さんは「パンが粉々になる音を聞きながら、トーストを食べる夢は諦めました」と語る。
現在、大山さんはその部屋に近づくことさえできていない。部屋のドアを開けるたびに、跳ね返ってきたバターの塊が顔面に直撃するからだ。彼は今、キッチンの外から長い棒を使って、バターまみれの壁を掃除する新たなロボットの研究を始めている。
「結局、バターを塗る手間より、掃除の手間の方が増えましたね」と大山さんは爽やかに語るが、その肩には今朝もバターの欠片が乗っている。彼は今日も、より効率的な朝食のために、バターを遠隔で溶かすための高出力レーザー装置の設計図を描き続けている。
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