針谷さんは幼少期から、消しゴムのかすを無駄にせず、練り合わせて彫刻作品を作ることに異常な執念を燃やしてきた。彼のアトリエである築30年のアパートの一室には、これまで製作された『ピラミッド』や『サグラダ・ファミリア』といった、やや黒ずんだ芸術品が所狭しと並んでいる。
今回完成させた『凱旋門』は、高さ1メートル80センチに達し、精巧なレリーフまで再現された力作だ。しかし、材料のすべてが合成ゴムと鉛筆の芯の粉末であるため、室内の気温が30度を超えると、凱旋門全体がじわじわと南国風の溶岩のようにとろけだすという欠陥があった。
管理会社からは、「異臭と粘着性によって床の張り替えが不可能になっている」という理由で退去勧告が下された。さらに、凱旋門が強烈な摩擦力を発揮したため、玄関ドアと廊下が完全に密着し、開かずの間と化す二次被害も発生している。
針谷さんは涙ながらに「凱旋門は私の青春そのもの。このカスには30年分の『間違えてはいけない』という緊張感が詰まっているんです。取り壊すなんて、私の歴史を破壊するのと同義だ」と強く主張している。
現在は、消しゴムのかすを溶かして再利用する「練り消しアート転売」で引っ越し費用を稼ぐべく、近所の公園で凱旋門の破片を『パワースポットの破片』として無料配布中だ。近隣住民からは「道に落ちているゴミと見分けがつかない」と困惑の声が上がっている。
なお、今後は『奈良の大仏』の製作を計画しており、材料となる消しゴムのかすを確保するため、友人の帳簿の書き間違いを修正するという特殊なアルバイトに精を出しているという。
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