「なぜ人類は、毎朝手作業でバターを塗っているのか?これこそ文明の停滞だ」と豪語するのは、自宅ガレージで奇妙な発明を続ける技術者の羽鳥健太郎氏(42)だ。彼が開発したのは、その名も『バター・トルネード・スプレッダー』。パンを高速回転させ、遠心力でバターを均一に塗り広げるという画期的なコンセプトだ。

仕組みは至ってシンプル。強力な電動モーターの上に食パンを固定し、スイッチを入れると時速100キロ相当の回転が発生。そこに室温で柔らかくしたバターを投入するというものだ。羽鳥氏は、この方法なら0.02秒でパンの表面が黄金色に輝くと自信満々に語る。

しかし、先日の公開実験では予期せぬ事態が発生した。スイッチを入れた瞬間、遠心力に耐えきれなくなった食パンが突如として霧状に分解。飛散したバターとパンの粉末は、まるで猛吹雪のようにガレージ内を埋め尽くした。居合わせた近隣住民は「バターの甘い香りがする雪山に閉じ込められたかと思った」と震え声で振り返る。

壁一面が脂ぎった黄色に染まる中、防護ゴーグルを装着した羽鳥氏は、一点を見つめて笑みを浮かべていた。「塗りが足りなかったようだ。次は回転数を倍にする」と、彼はすでにマシンの強化プランを練り始めているという。

現在、このマシンによってキッチンは「住める環境ではない」として一時閉鎖措置が取られているが、羽鳥氏の熱意は冷めやらぬまま。彼は次なる挑戦として、ジャムをピンポイントで射出する『弾道ミサイル式ジャム塗布器』の開発に着手する予定だそうだ。

結局、羽鳥氏がその日食べた朝食は、床に落ちたバターの一部を拾い集めただけの「乾いた食パン」であったという。効率化の果てにたどり着いたのは、人類が忘れていた原始的な生活そのものだったのかもしれない。