羽田野さんは、忙しい朝の時間を節約すべく、ネクタイを挿入するだけで数秒で結び目が完成する画期的な装置『タイ・タイ・タイガー』を自宅のガレージで開発した。試作機は極めて優秀で、世界中のネクタイ愛好家が涙を流して喜ぶであろう完璧な三角形を、わずかコンマ5秒で形成することが可能だった。
しかし、悲劇は昨日朝の試着中に起きた。電源を入れた装置は、羽田野さんの首に巻き付けたネクタイを驚異的な速さで巻き込み始めた。装置は「完璧なウィンザーノット」というプログラムを完遂するために、結び目を締め、緩め、再び締めるという調整工程を高速で繰り返したのである。
目撃した妻の美智子さん(40)によると、「夫は最初は『お、いい感じだ』と感心していたのですが、機械が暴走して30秒間に400回も締め直しを繰り返すうちに、夫の顔色が信号機の赤から紫へとグラデーションのように変化していきました」という。
羽田野さんは装置を停止しようと必死に電源ボタンを探したが、装置が形成した完璧な結び目が喉仏を強力にプレスしていたため、声が出せず、ボタンを押そうとする手も装置が誤って「ネクタイの端を整える」と判断して巻き取ってしまったため、身動きが取れなくなった。
駆けつけた消防隊員は、あまりに美しく、あまりに強固なウィンザーノットを見て「これは解くことが不可能に近い。芸術的すぎてハサミを入れるのが躊躇われる」と驚愕した。最終的に、特殊な金属切断機を用いて装置を破壊し、羽田野さんは無事救出された。
羽田野さんは救出直後、息も絶え絶えになりながらも「結び目のディンプル(くぼみ)は完璧だった……」と呟き、救急車の中で気絶した。現在、彼は首にコルセットを巻いた状態で、次回作『靴下を履かせてくれる全自動ロボット』の開発に着手しようとしているという。
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