このプロジェクトは、満員電車に揺られながら、車内のいたる所に設置されたトースター型スタンプ台へ食パンを押し当てることで、朝食を調理・完結させるという壮大な計画だ。波多野さんは「通勤時間は人生の損失だが、食パンの焼き加減を管理する時間に変換すれば、それは人生のボーナスステージになる」と熱弁する。
スタンプラリーの仕組みは極めて精巧だ。つり革を掴んだ状態で、あらかじめ用意した食パンの片面を、座席上の広告看板に仕込まれた赤外線加熱装置へ押し付ける。次の駅に到着するまでに、適度な焼き色とジャムの塗布が完了するよう計算されており、完璧なタイミングで「トースト完了」のチャイムが鳴る仕組みになっている。
しかし、実際に導入された初日、多くの通勤客がトースターに夢中になるあまり、降車駅を乗り過ごす事態が続出した。ホームで焼きたてのパンを頬張る乗客からは「香ばしい香りが立ち込める車内は、もはやカフェかパン工場か分からなくなる」「バターが溶け落ちて床が滑る」といった、喜びと困惑が入り混じった声が上がっている。
事態を重く見た波多野さんは、さらなる改良に着手。次は飲み物も同時に完結させるため、つり革を握る掌から自動でコーヒーが滴下する「エスプレッソ・ハンドル」の開発を宣言した。これにより、片手でパン、片手でカフェラテという、立ち食いスタイルを極めた通勤生活が実現するという。
現在、鉄道各社からは「パンの焦げた臭いで車両が火災と誤認される」との苦情が殺到しているが、波多野さんは「これは誤認ではない。食欲の警報だ」と意に介さない様子だ。明日の朝、我々が通勤する頃には、全車両が巨大なオーブンへと進化を遂げているかもしれない。
しかし、波多野さんの挑戦は意外な結末を迎えた。全車両にスタンプラリーを導入し、パンを焼き続けた結果、車両内の温度が上昇しすぎてしまい、全てのパンが「真っ黒な炭」になってしまったのだ。現在、彼は「全自動炭焼きバーベキュー列車」への転換を急ピッチで進めている。
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