大山氏が製作したこの装置『モーニング・アロマ・キャノン』は、タイマーをセットした時間に、家のどこからか猛烈な焼き魚の匂いを噴射するというものだ。単なる芳香剤ではない。その威力は、換気扇を全力で回してもなお部屋中に広がり、まるで築地市場のど真ん中で就寝しているかのような錯覚を住人に与えるほどである。

「脳を覚醒させるには、視覚や聴覚よりも嗅覚が最強なのです。焼き魚の香ばしい匂いは、どんな深い眠りについている人でも、自動的に『ご飯を食べなければならない』という原始的な本能を呼び起こします」と大山氏は自信たっぷりに語る。実際に試作機を体験した被験者は、初日の朝、夢の中で巨大なサバの開きに追いかけられる悪夢を見て飛び起きたという。

しかし、この装置には一つだけ致命的な欠点があった。あまりの匂いのリアルさに、近所の野良猫たちが毎朝7時になると大山氏の家の窓辺に集合し、魚の焼ける匂いを求めて大合唱を始めるのである。結果として、アラーム音よりもはるかに騒々しい猫たちの鳴き声で目覚めるという、本末転倒な事態に陥ってしまった。

さらに困ったことに、装置の噴射ノズルが故障し、朝の通勤ラッシュの時間帯にまで「焼きサケ」の匂いを放出する事態が発生。近隣の通勤客たちは、空腹感に耐えかねて会社を早退したり、途中のコンビニで朝食を買い漁ったりするなどのパニックが起きた。市役所には「朝から魚臭くて仕事にならない」という苦情が殺到した。

この事態を受け、大山氏は改良を決意。「次は魚ではなく、もっと平和な『焼きたてトーストの匂い』に切り替えます」と意気込む。しかし、専門家からは「匂いを変えても、近所のカラスがパンを求めて押し寄せる未来しか見えない」と冷静な指摘が入っている。

現在、大山氏は自身のベッドの周りに防音ならぬ『防臭カーテン』を何重にも張り巡らし、自分だけは無臭で快適な朝を迎えられるよう奮闘中だ。結局、装置が完成すればするほど、彼自身の生活環境はますます過酷なものになっていくという、皮肉な結末を迎えている。