「洗濯機はブラックホールへの入り口である」と長年唱えてきた波多野氏は、先月から自宅の庭で壮大な実験を開始した。彼が開発した『ソックス・ポジショニング・システム(SPS)』は、片方になった靴下の残留思念を微弱な電波としてキャッチし、その行方を地図上にプロットするという画期的な装置である。
実験初日、波多野氏は洗濯機から取り出した左足用の靴下をレーダーのアンテナに括り付け、スイッチを入れた。すると、システムは凄まじい轟音と共に作動し、庭中の木々を揺らした。レーダーが示した信号源は、なんと隣家の屋根の上でもなければ、異次元でもなかった。
モニターに映し出された赤い点は、ゆっくりと移動を続けていた。追跡を開始した波多野氏がたどり着いたのは、近所の公園にあるカラスの巣だった。そこには、過去3年間に波多野家から失踪した計42足の靴下が、見事に編み込まれて芸術的な巣を形成していたのである。
波多野氏は驚愕のあまり膝から崩れ落ちたが、すぐにその光景を見てあることに気づいた。「これ、巣としての保温性が高すぎるのではないか」。彼は帰宅後、ただちに靴下の回収を諦め、今度はその巣の断熱性能を測定するための巨大赤外線サーモグラフィーの制作に着手した。
「靴下が消える理由がカラスの建築欲だったのは予想外でしたが、これは新しい建築素材としての可能性を秘めています」と波多野氏は熱く語る。彼は現在、靴下をカラスにわざと盗ませるための『誘惑用ルアー靴下』の試作に忙しく、本来の洗濯作業は家族に全て丸投げしている状態だ。
近隣住民からは「また庭で何か変な機械が光っている」「最近、カラスが妙にオシャレな巣でくつろいでいる」といった困惑の声が上がっているが、波多野氏は今日もレーダーを見つめながら、「次は赤のボーダー柄がどの巣に集まるか統計を取る」と、新たな情熱を燃やしている。
コメント
まだコメントはありません。