羽田野健一氏は、かねてより「朝食を芸術的に楽しむ」という壮大な目標を掲げ、約三年の歳月をかけてこのマシンを開発しました。装置は高精度なセンサーでパンの気泡を読み取り、イチゴジャムの粘度を秒単位で制御して、ルネサンス絵画の微細なタッチをも再現する驚異のスペックを誇ります。
発表会当日、多くの報道陣が見守る中、マシンは完璧な筆致でトースト上にモナリザを浮かび上がらせました。会場からはどよめきと感動の溜息が漏れ、歴史的な朝食の誕生を誰もが確信した瞬間でした。羽田野氏は誇らしげに胸を張り、芸術作品を愛でるような表情で完成品を見つめていました。
しかし、その直後、羽田野氏は「芸術は爆発だ、いや、焼かなければただのパンだ」と呟くと、完成したばかりのモナリザ・トーストを、あろうことか直結していたトースターへ豪快に押し込みました。会場には困惑の空気が流れましたが、彼は真剣そのもので、最高火力の「こんがりモード」を選択しました。
「最高の芸術は、香ばしさと共に胃袋へ消えてこそ完成するんです」という彼の主張通り、三分後、トースターからは真っ黒に焦げた、かつてモナリザだった物体が排出されました。その姿はもはや絵画の面影など微塵もなく、ただの「苦い炭」と化していましたが、羽田野氏はそれを一口かじり、「焦げの中にダ・ヴィンチの精神を感じる」と満足げに涙を流しました。
今回のプロジェクトについて、羽田野氏は「次回はブルーベリージャムで星月夜に挑戦する」と語っていますが、周囲からは「まずはトースターを撤去してはどうか」という、切実かつ至極真っ当なアドバイスが相次いでいます。芸術の深淵は、どうやら焦げ臭い香りと共に広がっているようです。
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