田所弾丸さん(34)の朝は、極限の緊張感から始まる。彼が愛用するポップアップトースターは、焼き上がると同時にパンを勢いよく射出するタイプだが、田所さんはこれを「ランチャー」と呼び、あえて最も飛距離が出る設定に改造した。
「普通に皿に受けるなんて、面白みがないでしょう。重力に身を任せるだけのパンに、命を吹き込むんですよ」と語る田所さんの右手には、摩擦熱対策の厚手の軍手が二重にはめられている。彼はトースターの前に仁王立ちし、焼ける音に全神経を集中させる。
修行を開始して半年、田所さんの動体視力は飛躍的に向上した。以前はパンが顔面に直撃し、ジャムを塗り忘れたまま出社するという失態を犯したが、今や弾き飛ばされる食パンの軌道を正確に予測し、まるで野球の外野フライを追うプロ選手のような華麗なステップで追いかける。
先日行われた「限界トーストキャッチ」では、あえてトースターをテーブルの端に置き、パンが床に落ちるまでの0.8秒間でどれだけドラマチックなポーズでキャッチできるかに挑んだ。会場となった彼の自宅キッチンには、記録のために設置されたハイスピードカメラが並んでいる。
結果は惨敗だった。パンは最高到達点に達した瞬間に空中分解し、部屋中に焼きたての破片が散らばる「トーストの爆発」という前代未聞の事態に。しかし田所さんは満足げに微笑んだ。「これは敗北ではない。食パンの限界を知ったのだ」と、床に散らばったパン屑を掃除機で吸い込みながら語った。
現在、彼はキャッチの成功率を高めるために、トースターの射出口に航空力学を取り入れたガイドレールを設置する計画を立てているという。もはやトーストを焼くという目的は完全に忘れ去られ、ただ「飛ばして取る」という純粋な物理現象への情熱だけがキッチンで燃え続けている。
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