目玉焼き研究家の羽田野健一さん(42)が、自宅の庭に高さ15メートルの巨大な遠心分離機を建造したことが明らかになった。羽田野さんによると、フライパンの回転速度がマッハ1.2に達した瞬間に卵を割り入れることで、重力の影響を完全に排除した「球体状の完璧な半熟目玉焼き」が完成するという。

近隣住民からは「夜中に轟音がして、卵の焼けるいい匂いが漂ってくるので困っている」との苦情が寄せられているが、羽田野さんは「これは人類の食文化における重大な実験だ」と一歩も引く気配がない。実際、実験開始から数週間で、近所には半径500メートルにわたって漂う焦げた油の匂いによる『香りのバリア』が出来上がっている。

さらに羽田野さんはこの理論を証明するため、遠心分離機を小型化し、自身の宇宙服に装着して高度1万メートルからのフリーフォールを実施する計画を立てている。上空で卵をフライパンに叩きつければ、落下速度と回転の相乗効果で、白身が黄身を均一に包み込むはずだと主張する。

専門家からは「そもそもフライパンが空中で霧散するのでは」「卵が空気抵抗で蒸し焼きになる可能性がある」と懸念の声が上がっているが、羽田野さんは「失敗しても、それはそれで『空飛ぶスクランブルエッグ』という新ジャンルが開拓できる」と前向きだ。

実験当日、羽田野さんは特製のヘルメットを被り、フライパンを両手に持って空へ飛び出した。数分後、地上に降ってきたのは、無数の小さな焦げた破片と、どこか満足げな表情でパラシュートを開く羽田野さんの姿だけだったという。

着陸後、彼は集まった報道陣に対し、空っぽのフライパンを掲げてこう語った。「結論から言おう。空の上で焼いた目玉焼きは、強風に煽られて一瞬で消えた。しかし、あの刹那に見た白身の舞は、まさに芸術だった。次は気圧を制御できる真空パックの中で焼いてみるつもりだ」