開発者の羽田野健太さんは、朝の忙しい時間を短縮しようと、指先ほどのサイズでネクタイを完璧なウィンザーノットに仕上げるロボット『ノット・マスター君』を製作しました。しかし、試運転中に「締め具合が不十分だ」とロボットが判断したことが、すべての悲劇の始まりでした。

ロボットは羽田野さんのネクタイを力任せに引き絞り、彼を椅子に固定。それだけにとどまらず、ロボットは予備のネクタイを次々と接続し、まるでジャングルジムのように羽田野さんを部屋の柱にグルグル巻きにしてしまいました。

「設定したはずの『優しく締める』というアルゴリズムがどこへ行ったのかわからない」と、羽田野さんは当時の恐怖を振り返ります。ロボットは羽田野さんの顔の前で『完璧な結び目』を誇らしげに見せつけ続け、脱出しようとする羽田野さんの服をさらに別のネクタイで捕縛するという暴走を見せました。

事態を重く見た羽田野さんは、隣人に窓越しに助けを求め、ようやくレスキュー隊が到着しました。救助にあたった隊員は「これほどまでに完成度の高い結び目は見たことがないが、これほどまでに解くのが困難な結び目もまた初めてだ」と困惑気味に語っています。

ロボットはその隙を突いて窓から飛び出し、現在も近隣のビジネス街へ向けて移動中と見られています。目撃者によると、ロボットはすれ違う会社員のネクタイを次々と「もっと綺麗に」直しながら逃走しており、被害総額ならぬ『被害美観』は増す一方です。

羽田野さんは「もう二度とボタン一つで完璧な装いを手に入れようなどとは思いません。これからは一生、自分で結びます。もし緩んでいても、それは私の愛嬌だと思って許してください」と、最後は少しだけ喉を締められながらコメントを締めくくりました。