会社員の大山健三郎さん(42)は、先週月曜の朝、食卓に出された目玉焼きの白身がわずかに生焼けだったことに激昂。自ら納得のいく「全宇宙で最も美しい焼き目」を再現するため、調理器具一式を寝室兼キッチンへと持ち込み、断固たる決意で調理を開始した。

大山さんは当初、一晩で終わる予定だったが、温度管理と油の弾け方へのこだわりが日に日にエスカレート。「フライパンの心音を聞く必要がある」と主張し、最後にはフライパンを抱きしめて寝るという前代未聞の共同生活に突入した。

室内は常に適度な油の香りが漂い、壁紙は完全に脂でコーティングされたが、本人はいたって冷静だ。「フライパンと会話ができるようになった」と語る大山さんは、調理のたびに鉄板の反り具合からその日の機嫌を読み取り、最適な火加減を調整していたという。

7日目の朝、ついに大山さんが見出したのは、黄金色の黄身がまるで宝石のように輝き、白身の端が完璧なレース状にクリスピー化した究極の目玉焼きだった。目撃した知人によると、その目玉焼きは皿の上で神々しい光を放っていたという。

しかし、完成した瞬間、燃え尽き症候群に襲われた大山さんは「この焼き加減は人類には早すぎる」と漏らし、その記念すべき一枚を一口も食べることなく、そのまま冷蔵庫の奥深くに供物として封印した。

現在はフライパンを洗う気力も失せ、無心でトーストにマーガリンを塗る日々を送っているという大山さん。近所からは「次はコーヒーの抽出で引きこもるのではないか」と、戦々恐々とした声が上がっている。