この挑戦は、羽田野氏が長年抱き続けてきた「給食の時間、もっと効率よくカレーを食べられれば休み時間が長くなるはずだ」という幼少期の純粋かつ歪んだ情熱から始まった。彼は金属加工の町工場を三日三晩説得し、特注のステンレス製巨大スプーンを製作。その重量は実に15キログラムに達し、持つだけで腕の筋肉が悲鳴を上げる代物だ。
挑戦の舞台となった自宅キッチンには、近所の住民やなぜか駆けつけた地元の野良猫たちが見守る中、特大鍋で煮込まれた10人前のカレーが湯気を立てていた。羽田野氏は屈強な防護服に身を包み、「カレーは飲み物という概念を物理的に証明する」と宣言。観衆は固唾を飲んでその瞬間を待った。
カウントダウンとともに、羽田野氏は両手で巨大スプーンを握りしめ、鍋の中へとダイブさせた。スプーンは鍋の底をえぐり取り、カレーと具材の塊を完璧にすくい上げたように見えた。しかし、その瞬間、あまりの重量バランスの悪さに羽田野氏の体勢が大きく崩れ、重心を失った巨大スプーンは勢いよく宙を舞った。
カレーの塊は放物線を描き、そのままリビングの壁一面に芸術的な模様を描いて着弾。現場は一瞬にしてスパイスの香りに包まれたが、羽田野氏はスプーンの柄に引きずられるようにして床に倒れ込んだ。彼の顔面には、奇跡的にスプーンに乗っていたジャガイモが一つだけ付着していた。
「一口で食べたかったのは、カレーではなく私の野望だったのかもしれません」。壁のカレーを呆然と眺めながら語る羽田野氏の目は、すでに次の挑戦、つまり『巨大フォークで焼きそばを吸い上げる計画』に向けられていた。なお、この日、羽田野氏の夕食は壁に付着したカレーをスプーンでこそぎ落とすという、非常に寂しい作業になったことは言うまでもない。
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