羽田野さんが考案したこの冷却法は、『天然の空冷システム』と名付けられている。彼は、「電子レンジの熱風や扇風機では生温い。地球という巨大な扇風機を使うしかない」と語り、自身のバイクの後部座席に特製のステンレス製麺ホルダーを溶接した。
実験当日、羽田野さんは完璧な茹で加減に仕上げた麺を丼に入れ、ラップで厳重に保護した状態でホルダーにセット。最高速度で公道を走行しながら、時速120キロの風圧で麺を急冷させるという計画を敢行した。
しかし、時速80キロを超えたあたりで問題が発生した。麺が空気圧に耐えきれず、まるで吹雪の中の洗濯物のように激しく暴れ出し、スープと麺が分離して周囲に霧状に散布されるという悲劇的な事態に陥ったのである。
羽田野さんは「麺を冷やすことには成功したが、肝心の麺がどこかへ消えてしまった」と冷静に分析。その顔面は、時速100キロで飛散したスープによって複雑な模様に染まっていたという。
目撃した住民からは、「最初はバイク便かと思ったが、後ろに丼を乗せて麺をなびかせる男が通り過ぎて二度見した」との声が上がっている。警察も交通安全の観点から職務質問を行ったが、あまりの熱意に「次はせめてヘルメットに丼を固定してはどうか」とアドバイスするしかなかったそうだ。
現在、羽田野さんは今回の失敗を糧に、次は気球を用いた『上空冷却システム』の準備を進めているという。「高度が高ければ気温も下がり、理想の温度に達するはずだ」と意気込む彼の手元には、すでに新たな即席麺が30食ほど積まれている。
結局、羽田野さんがこの日に食べた唯一の食事は、バイクのフロントガラスにこびりついた冷え切ったネギの一切れだけだった。彼はそれを食べながら、「これぞ究極のアルデンテだ」と満足げに頷いていた。
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