都内在住の会社員、轟木太一さん(34)は、過去10年間にわたり「納豆を最もふわふわにする方法」を研究し続けてきた。毎朝、出社前の貴重な時間を使い、彼はひたすらに箸を回し続けた。これまでの最高記録は3万回だったが、彼は納得していなかった。本日の早朝、ついに目標としていた6万回を達成した。
「最初はただの粘り気でした。しかし、3万回を超えたあたりから、納豆の糸が銀河のような光を放ち始めたんです」と轟木さんは語る。会場となった自宅キッチンには、計測器を持った友人たちが詰めかけ、その異様な光景を見守っていた。納豆の容器の中は、もはや大豆の形を留めておらず、未知の生命体のような純白の泡塊となっていた。
5万9900回を超えたあたりで、周囲の空気が重く変化したという。目撃者によると、容器から立ち上ったのは湯気ではなく、七色に輝く微粒子だった。そして6万回目の攪拌(かくはん)を終えた瞬間、轟木さんの手から離れた容器は、重力を無視するようにゆっくりと天井に向かって浮き上がった。
「計算通りです。粘り気が空気中の窒素と化学反応を起こし、納豆そのものが気体に近い性質を得たのです」と轟木さんは冷静に分析する。会場は拍手喝采に包まれたが、浮遊した納豆はそのまま換気扇に吸い込まれ、近所の住民から「空からネバネバした光が降ってくる」と通報が相次ぐ騒ぎとなった。
事件後、轟木さんは「次回は10万回に挑戦したい」と意欲を見せている。なお、今回の納豆は、味については「もはや概念としてしか存在していないため、食べた瞬間に満腹感だけを感じる」とのことである。専門家からは「朝ごはんなら普通に食べた方がいい」と苦言が呈されている。
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