「毎朝のトーストにバターを塗る時間が惜しい」という古賀さんの純粋かつ怠惰な動機から生まれたこのマシンは、全長5メートル、総重量2トンという、まるで何かの最終兵器のような威容を誇る。キッチンに鎮座するその姿は、調理器具というよりは、むしろ要塞防衛用の火砲に近い。

今朝行われたデモンストレーションにおいて、ブレックファスト・マスター・ゼロは本領を発揮した。古賀さんがボタンを押すと、轟音とともに食パンが装填され、内蔵されたジェット噴射式トースターが一瞬にしてパンを完璧なキツネ色に焼き上げた。ここまでは完璧だった。悲劇は、その後のトッピング工程で始まった。

ロボットは焼き上がったパンを認識すると、高速回転するバター塗布用のアームを起動。しかし、調整ミスによりアームは時速80キロの速度で回転。遠心力でバターは室内に霧状に飛散し、キッチンは一瞬にして黄金色の霧に包まれた。続くジャムの塗布工程では、空気圧で発射されたイチゴジャムが、壁に芸術的なまでの赤い弾痕を描き出した。

さらに事態を悪化させたのは、最後の「皿出し」工程である。ロボットは焼き立てのパンを、高速弾射出装置を用いて皿の上に着弾させようと試みた。結果、トーストは皿を砕き、キッチンカウンターを貫通し、さらに隣の部屋のふすまを突き破って、寝起きの猫の足元に正確に着地したのである。

「精度は悪くなかったんです。ただ、パンの物理強度が私の計算を超えていました」と、ジャムまみれの防護ゴーグル越しに語る古賀さん。近隣住民からは「また朝から何かが爆発したかと思った」「バターの匂いがする砲撃はやめてほしい」といった苦情が寄せられているが、本人はすでに、次はベーコンを正確に口元へ運ぶ「ベーコン・スナイパー機能」の実装に意欲を燃やしている。

現在、古賀さんの自宅周辺は、野良猫たちが「ジャムの焼けるいい匂い」を嗅ぎつけて集まってくるという、奇妙な聖地と化している。