羽田野氏によると、白い中身の部分はあくまで「耳を支えるためのスポンジ状の構造材」に過ぎず、栄養価と食感の真髄はすべて耳に凝縮されているという。この信念に基づき、氏は過去10年間にわたり全国のパン屋から排出される耳を独自のルートで収集・乾燥させてきた。
建築予定地には、乾燥させて硬化させた耳ブロックが高さ2メートルまで積み上げられている。氏はこれを「トーストレンガ」と命名し、専用の接着剤として煮詰めたシュガートーストシロップを使用する計画だ。強度については「湿気さえ来なければ、一般的な木造住宅を凌駕する耐久性がある」と自信を見せている。
しかし、最大の難関は害虫対策である。建築現場の近隣住民からは「住宅というよりは、巨大なアリの巣の餌場ではないか」という懸念の声が上がっている。これに対し羽田野氏は、「アリとの共生こそが真のエコ住宅」と一蹴し、壁面には防虫ハーブの代わりにシナモンパウダーを大量に散布するという独自の対策を講じている。
このプロジェクトの壮大さは、屋根の素材にまで及んでいる。羽田野氏は、より固い食感を追求するため、あえて焼きすぎた「焦げ耳」のみを厳選して使用する予定だ。これにより、雨風を遮断するだけでなく、家全体がほのかに香ばしい匂いを放つ、世界初の「食べるアロマハウス」が完成する見込みである。
工事は順調に進んでいるかのように見えたが、先日、近所の野良猫たちが建設途中の壁面を齧り取って逃走するという事態が発生した。現場監督を務める羽田野氏は、「彼らもこの味を知ってしまったか」と苦笑しつつ、現在は壁の外側にさらなる補強として、猫除けの強力なバタークリームを塗布する作業に追われている。
プロジェクト完了後の展望について尋ねられると、羽田野氏は目を輝かせながら答えた。「完成したあかつきには、自分自身もパンの一部になりたい。最終的には、この家の中で毎朝焼きたてのコーヒーを飲みながら、壁の一部をちぎって食べるのが夢なんです」と語った。
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