パン愛好家の羽田野健一さん(42)は、幼少期より「パンの耳の香ばしさこそが人類の到達点」と信じ続けてきた。しかし、近年の食パンブームにより、柔らかさを追求するあまり耳までソフトなパンが増えていることに激しい憤りを感じていたという。
そこで羽田野さんが立ち上げたのが『プロジェクト・エッジ・オンリー』である。これは、市販の高級食パンから、メスを使って白い柔らかい部分を極限まで削ぎ落とし、耳だけの巨大な塊を作るという狂気の挑戦だ。
実験場所となった自宅キッチンには、精密な外科手術用メスと、切除された白いパンが雪のように積み上げられている。羽田野さんは防護服に身を包み、一日平均14時間を費やして「白い部分の除去」作業に没頭しているという。
「柔らかい部分はパンのノイズだ。耳という旋律を邪魔する雑音を排除してこそ、パンの本質に近づける」と羽田野さんは語る。その目は極度の集中状態にあり、もはやパン職人というよりは精密機器のエンジニアに近い。
先日完成した『耳タワー』は、高さ30センチにも及ぶ、すべてパンの耳で構成されたオブジェとなった。これを軽くトーストして食べた羽田野さんは、「口の中が全方位から香ばしさに殴られる。これぞ理想の食感だ」と涙を流しながら完食したという。
近隣住民からは「毎日のように白いパンの破片がゴミ袋から溢れていて怖い」「何を作っているのかさっぱりわからない」といった苦情が寄せられているが、羽田野さんは一切動じる様子がない。
現在、彼は『耳の面積を最大化するために、円柱形のパンを焼く』という新たな計画を進行中だ。白い部分をいかに効率よく取り除くか、さらなる効率化を目指して専用のパン焼き型まで自作しているという。
結局、羽田野さんの食卓には、切除された白い部分だけが大量に残り、近所のパン屋からは「もう白いパンを買わないでほしい」と出入り禁止を宣告された。羽田野さんは「次は自分で耳だけのパンを開発する」と、新たな耳の境地を目指して邁進している。
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