「なんだかすごく暇だなあ。いっそダイヤモンドでも掘りに行こうかな」。

ある晴れた日の午後、自宅で退屈しのぎに呟いたこの言葉が、まさかこれほど大きな波紋を呼ぶとは、ひまたろーさん自身も予想していなかったという。

彼の母親が近所の井戸端会議で、「うちの子が暇つぶしにダイヤを掘るって出かけたのよ」と冗談めかして話したのが事の始まりだった。この話が瞬く間に尾ひれをつけて近隣住民へ伝わり、「ひまたろーさんが宝のありかを知っているらしい」「町外れの河川敷でダイヤが見つかった」といった噂が独り歩きを始めてしまったのだ。

翌朝、ひまたろーさんがスコップを片手にのんびりと公園へ向かうと、そこには既に数十人の住民がシャベルやバケツを手に待ち構えていた。「どこを掘ればいいんだい?」と目を輝かせる住民たちに囲まれ、彼は何が起きたのか状況を飲み込むのに時間がかかったという。

噂はさらに加速し、昼過ぎには市内全域から「自分も掘りたい」という人が殺到する事態に。公園の砂場から公共施設の花壇まで、市内各所で土を掘り返す人々の姿が見られ、自治体には問い合わせが殺到する異例の事態となった。

夕方になり、もちろんダイヤは見つからないという現実が明らかになると、熱狂は静かに収束していった。それでも住民たちの表情には、久しぶりに街が一体となって盛り上がった高揚感のようなものが残っていたようだ。

騒動の中心人物となってしまったひまたろーさんは、「ただ暇だっただけなんです。でも、みんなで土を掘りながらあんなに笑いあったのは、ある意味でダイヤ以上の宝物になったかもしれません」と、少し照れくさそうに振り返った。