電子工学を独学で学ぶ会社員、羽田野健二さん(42)は、三年前から「パンにジャムを塗るという人類の無駄な時間を削減する」ことを目標に、全自動ジャム塗り機『ジャム・シュート・マスター・アルファ』の開発に没頭していました。試作機はパンをセットすると、高圧エアガンでジャムを高速射出するという、彼曰く「革新的な」仕組みを採用していました。

事件は今朝の七時過ぎ、羽田野さんが家族のために初めて実演を行った際に発生しました。食卓にセットされた食パンに向かい、羽田野さんが自信満々にスイッチを押すと、機械は凄まじい轟音と共に作動。しかし、想定されていた「優雅にジャムが広がる」光景とは裏腹に、ジャムの塊は時速三百キロを超える弾丸となってキッチンを直撃しました。

噴出したイチゴジャムの衝撃波は凄まじく、キッチンカウンターを粉砕し、壁という壁を真紅に染め上げました。家族が悲鳴を上げて逃げ出す中、機械は「まだジャムが足りない」と判断したのか、タンクに残っていた五キロのイチゴジャムを、まるで高圧洗浄機のように噴射し続けました。

近隣住民が「イチゴの甘い香りと共に爆音が聞こえた」と証言するように、現場はさながら童話の世界の拷問部屋のような惨状となりました。羽田野さんはジャムまみれになりながらも「塗布の均一性は完璧だった」と取材陣に語り、呆然と立ち尽くしていました。

現在、家屋は専門の清掃業者によって復旧作業が進められていますが、あまりのジャムの量に、近所の蟻たちが一年分のご馳走を求めて行列を作る事態となっています。羽田野さんは懲りることなく、次はバターをスライスして均等に配置する「バター・ギロチン・プロ」の開発を検討しているとのことです。