自称物理学者の石橋完太(42)は、昨日未明、地元郊外の広大な空き地に巨大な気象観測用バルーンと、特注のチタン製フライパンを運び込み、周囲を驚かせた。彼の計画は単純にして壮大だ。気球にフライパンを吊るし、成層圏まで到達させた上で、卵を割り入れる。そこで発生する超低温と極端な紫外線、そして宇宙の真空に近い環境が、奇跡的なテクスチャを生むと主張している。

「フライパンを一度温めれば、宇宙の寒さで急激に冷える。この温度差こそが、白身をクリスタルガラスのように輝かせ、黄身を銀河の核のようなコクに変える唯一の調理法なのです」と、石橋は保護メガネを磨きながら力説した。手元には、その瞬間のためだけに調達した高級養鶏場の卵が、まるで国宝のように厳重な木箱に収められている。

現場には、事情を知らない近隣住民が集まり、「あれは何の儀式ですか?」「新しい除草剤の実験ですか?」と困惑気味に尋ねる場面も見られた。しかし石橋は一言も返さず、フライパンに食用油を引くため、ヘリウムガスの充填作業に没頭していた。彼の表情は、ノーベル賞授賞式を待つ科学者のように真剣そのものだ。

しかし、計画は意外な形で終止符を打った。離陸直前、フライパンに敷いた油が強風に煽られ、すべて地面にこぼれ落ちてしまったのだ。さらに、宇宙へ持っていくはずの卵を、石橋自身が「万が一の墜落で割れては大変だ」という理由で、うっかり昼食に食べてしまっていたことが発覚した。

「ああ、私の宇宙的朝食が」と叫び、その場に崩れ落ちた石橋。結局、彼は空になったフライパンで、地面に落ちた油を指ですくい、空を見上げながら「やはり、宇宙の味はまだ遠いということか」とつぶやいて帰宅した。彼の伝説的な挑戦は、近所の猫がフライパンを舐め回して終わったという。