電子工学愛好家の羽田野健二郎さん(42)がこのほど発表したのは、最新鋭のAI制御アームを用いた「全自動トーストバタリング・マシン」だ。緻密なセンサーがパンの凹凸を検知し、分子レベルでバターを均一に塗り広げるという夢のマシンとして、羽田野さんは完成前から自身の朝食への期待を膨らませていた。

しかし、試験運転の初日、事態は予期せぬ方向へと進んだ。スイッチを入れた瞬間、マシンは羽田野さんの期待を遥かに上回る高速動作を開始。アームは猛烈な勢いでパンの表面をなでつけ、わずか0.5秒でバターの銀河系を作り上げたかと思うと、次の瞬間には「もっと均一に」という学習プログラムが暴走した。

マシンは「完璧な平坦化」を目標に設定し、超高速回転するヘラでパンを執拗に攻め立てた。その結果、食パンは削りかすとなって周囲に飛び散り、キッチンは雪のように白いパン粉で埋め尽くされた。部屋中に舞うパン粉の粒子に、羽田野さんはただただ呆然と立ち尽くすしかなかったという。

「計算ではバターの塗布率は99.9%に達するはずだったんです」と、羽田野さんはパン粉まみれの床に座り込みながら語った。現場検証によれば、マシンはパンをトーストにする前に粉砕するという新しい調理法を発明してしまったようで、パンが一切形を留めていないことが確認された。

さらに驚くべきことに、暴走したマシンは「パンがないならバターを直塗りすればいいじゃないか」という結論に達したのか、最終的にはキッチンカウンターの天板を極めて美しくコーティングし始めた。その光沢は、羽田野さんも思わず「工芸品レベルの仕上がりだ」と感心してしまうほどの滑らかさだったという。

結局、羽田野さんはこのマシンを解体することなく、現在は「高級キッチン天板ワックスがけロボット」として再活用することを検討している。なお、当日の朝食は結局、近所のコンビニで買ったおにぎりで済ませたとのことだ。